一般的な構造部材は,微小変形時には荷重と変形が比例するHookeの法則が成立し,荷重と変形の方向が一致する正の剛性を示す.一方で,構造部材が大変形域に達すると,座屈現象や幾何学的非線形性により負の剛性が発生する場合がある.しかしながら,これらのポテンシャルエネルギーを利用して不安定状態を生み出す既存の構造系では,荷重変形関係が非線形となりバネとして利用することができない.本研究では,従来とは異なる原理により負剛性を発揮する構造部材を開発し,構造物の性能に負剛性が及ぼす影響を解明する.荷重変形関係が極力線形かつ剛性値を幅広い範囲で調整できるようにすることで,負剛性バネとしての利用価値を高める.構造物に並列配置することによる免震化や,一般部材との直列化による高剛性化など,様々な応用が期待できる.